『アウシュヴィッツの図書係』読了
戦時という絶望の中で本に希望を見出し、命の炎を消さないように生き抜いた少女の、実はに基づく物語だ
主人公はディタという名前の、ユダヤの血を引く少女だ
ユダヤ人というだけで囚われ、過酷な収容所での生活を送るが、ひとときの楽しみは本だった
収容所では本を読むことはおろか、持つことでさえ禁止されており、見つかったらひどい罰を受けることになっていた
だが、子どもたちが本によって外の希望に満ちた世界を知り、残酷な世界から目を背けられるのであれば、本を持っていることが見つかるわけにはいかない
そうして、本を守る図書係として役割を得たディタは勇敢な少女として育っていく
家族や出会った人々が病気や虐殺によって離れて行っても、その悲しみに負けることはなく希望を捨てなかった
この本によって収容所でなされていた胸糞悪い虐殺を目の前にした気分になったと共に、「本は自分を別の世界に連れて行ってくれる」というディタの思いも感じ取れる作品だった
評価するのは難しい
悲しさに満ちた作品だ
だが、本の持つパワーに救われ、希望を捨てずに生きた女性の人生を歩んでいる気分にもなれる作品でもある
10点満点で8点くらいの作品だ
なにより、実はが元になっていることがリアルさを加える要素となっている
その時代に、前世の自分は生きていたのかもしれない