『ボクたちはみんな大人になれなかった』読了
「リアルすぎて、儚くて、大人にはなれないラブストーリー」
ボクが人生でこれ以上ないほどに好きになった人
遠い過去にその人とは別れた
気づけば友達リクエストを送信していた
そんな描写から始まる切なさに満ちた回想のラブストーリーだ
彼女との思い出、別れてから出会う人々との心の動き
現在の心情と過去の描写をうまく織り交ぜながらストーリーは進んでいく
「本当に好きだった」が、それを当たり前で普通で日常だと思いながら生きていた
でも今ではその人は隣にいない
「別れてから気づく」なんてありきたりな物語ではない
大人になれなかったってつまりどういうこと?
それを問いながら読み進めてほしい
多種多様な大人像を読み取れるし、どれも正解だと思う
あらすじはここまで
ネタバレにもなるけど考察を書きたい
「大人になれなかった」とは何か
作中では大人の定義やシンボルとなる人物像は出てこない
だから、正解のない物だけど読者に解釈が委ねられる物語にもなっている
自分が思うに「大人になれなかった」とは、2つの要素が重なり合った「大人」になれなかったことだと思う
1つ目の要素は、「自分の思い描いていた大人」になれなかったということだ
彼女の「キミは大丈夫だよ、面白いもん」という言葉に支えられていた
自分は面白いのか
彼女は認めてくれていたが、自分は半信半疑で、「面白い大人」にはなれていないと思っていたのではないかと思う
2つ目の要素の方が個人的には好きだ
それは、「彼女」や彼女の言った「キミは大丈夫だよ、面白いもん」という「過去」の出来事に囚われ続けていて大人になれていないということだ
心の中にずっと彼女が存在している
忘れられない存在として心にいる
もはや過去を生きており、大人になれていないんだと実感する
大人になれていないとは、この2つの要素を合わせた物なのだと思う
でも、実は大人になれているんじゃないかという説も提唱したい
「大人になれていない」ということに気づき、大人になろうともがき葛藤することこそ大人になるということなんじゃないか
忘れられない彼女に囚われ続けていることに気づき、もがいてることこそ大人なんじゃないか
「うれしい時に、かなしい気持ちになる彼女の気持ちがやっとわかった」
強く面白く魅力的な彼女は、付き合ってるときからもがいていたのではないか
彼女は大人だった
大人が何かを理解して、自分も大人になるのである